人に語りたくなる怖い話

趣味で集めた怖い話・怪談のご紹介と、話の理解や語り方について深めていくための分析録を記しております。

第5話『喉が渇いた』- 考察と語り方

寝ている女性
【目次】

  • 概要
  • 本文
  • 前提・豆知識
    • 「ベッドの下」シリーズ
  •  分析・考察
    • お話の構成
    • 効果抜群な相手
    • 恐怖の対象は「人間」
  • 語る際のポイント

 

概要

語り尺  :やや短い(4~5分)

知名度  :非常に有名

難易度  :初級

主な話者 :特になし

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第4話『作り話』- 考察と語り方

電灯の下の女
【目次】

 

概要

語り尺  :短い(2分程度)

知名度  :非常に有名(『人志松本のゾッとする話』にてOA)

難易度  :初級

主な話者 :なすなかにし 中西茂樹

 

本文

これはある男性Aさんが実際に体験したという実話怪談です。

 

Aさんは寒い冬のある日、男女6人で飲み会をしていました。するとその会の中でふと、1人1話ずつ怖い話をしていこう!と、それぞれの知っている怪談を順番に話していく流れになったんだそうです。

 

何人かが話し終えて、ついにAさんの番が回ってきました。ですがAさんは怪談話に疎く、この流れで話せるようなネタがひとつもなかったんだそうです。

 

しかしここで「ごめん、話せるネタがない」と白状しても場が白けてしまうと考えたAさんは、今思いついたテキトーな怪談を話すことにしたのです。

 

その話はというと、「ここの近所の駐車場で昔焼身自殺があった。そこには霊がでるという噂がある。」という、それらしい内容のもの。

 

すると、その話を聞いたみんなは「うわ、気持ち悪い」「私その場所知ってる」など思いのほか良いリアクションで、何とかその場を凌ぐことができたんだそうです。

 

飲み会が終わって、Aさんは1人歩いて帰路につきました。すると向こうの方から女の人が歩いてくるのに気付いたんだそうです。よく見ると冬場なのに何故か薄着で、どことなく変わった人だなという印象でした。

 

Aさんと女の人がすれ違うちょうどその時、女が突然「あの、」と声をかけてきたんだそうです。怪談話をしてきた後ですし、夜中に声をかけられるだなんて想像もしていなかったAさんはとても驚きました。

 

話を聞いてみると、どうやら道を尋ねたかったようなのですが、女が知りたいというその場所は、先程の飲み会でAさんが話した「あの駐車場」だったんだそうです。

 

Aさんはさらに驚きましたが、「気味が悪いけど、たまたまだろう」と駐車場までの行き方を伝えました。すると女は「ありがとうございました」と言って、伝えた方向へと歩いていきました。

 

Aさんは足早にその場を去ろうと歩き始めましたが、背中からまた「すみません」と声がしました。Aさんがびくっとしながらも振り返って「何ですか?」と答えると女は最後にこう言ったんだそうです。

 

「さっきの話、私のことですよね?」

  

前提・豆知識

なすなかにし 中西茂樹

『人志松本のゾッとする話』にて怪談芸人としての知名度を上げたと言っても過言ではない、なすなかにし中西茂樹氏。今回取り扱った「作り話」の他にも筆者のお気に入りはいくつかあるのですが、「カラオケバイトの面接」が有名どころでしょうか。他の怪談芸人と比べて、オチまで最短ルートで進むような短編が多いのが特徴です。怪談を話し慣れていない方でも真似しやすいものが多いと思いますので、いくつか覚えてみると良いでしょう。

 ↓こちらが今回のお話のTVOA版です。タイトルは「友人のウエダくん」

 ↓こちらはより話が整理された別企画のもの。余計な編集が入っているせいで怖さが半減しているため、始めて観る方は上記のものから観ることをおすすめいたします。

 もちろん芸人としての本分、漫才も面白いですよ。

分析・考察

皆様の中には「これはさすがに実話じゃないんじゃ…」と思っている方がいるかも知れません。(実をいうと筆者もその一人だったりします。。)しかし、これはあくまで「怪談」です。このお話が事実だったらと思うとゾクゾクわくわくしますし、そこを議論するのは野暮というものなので、誰かにお話する際は当然「これは実際にあった話らしいんだけど...」として語り始めてください。

筆者の意地悪な予想としては、事実+妄想によって生まれた怪談なのではと勘繰っており、事実に基づいた恐怖の種とそこから発生した恐怖の飛躍を以下のように分析してみました。

【事実】

  • 飲み会でテキトーな怖い話をして何とかその場を凌いだ。
  • 飲み会の帰りにちょっと変な雰囲気の人とすれ違った。
  • 恐怖の種:怪談を話した帰り道だったのもあり少し怖く感じた。

【妄想】

  • 恐怖の種:変な人だったな、話しかけたりされなくてよかった。
  • 恐怖の種:例えば急に道を聞かれたりとか。
  • 恐怖の飛躍①:もし聞かれた場所が何故か「あの駐車場」だったとしたら?
  • 恐怖の飛躍②:もしあの人が実は自殺事件を知ってて聞いてきたとしたら?
  • 恐怖の飛躍③:もしあの人が自殺した本人だったとしたら?

いかがでしょうか。ちょっとしたエピソードが怪談として成立するまでを独断と偏見で推測してみました。今回の予想は少しやり過ぎかもしれませんが、怪談に限らず人から人へ伝わる話には尾びれ背びれが付いていくものです。全ての怪談は人がより恐怖を感じる形に多少なりとも変化していっているはずなので、自分のお気に入りの怪談がどのような恐怖心に呼応して飛躍していったのか、一度考えてみると面白いかも知れません。

この話の生まれはさておき、筆者がこの怪談をテレビで観た当時「作り話のつもりが事実だった」というオチの仕組みがとても斬新に感じた記憶があります。今でこそ、この手の話はいくつか見つかるのかも知れませんが、この尺の短さキレ味の良さ、そしてありそうでなかったオチの組み合わせが、お気に入りの理由です。

語る際のポイント

有名な怪談を語る

知名度の高そうな怪談を披露するときは語り出しに注意が必要となります。本やネットで調べたものはもちろんですが、テレビで観たような話は特に気を付ける必要があります。

例えば今回のお話をテレビで知ったとした場合、語り出しでは必ず「中西っていう芸人がテレビで話してたんだけど」などとネタ元を明かすようにしてください。誰が話していたものか思い出せない場合は、メディア(TVで観た、YouTubeで観た等)だけでも良いかも知れません。

怖い話というのは色々なコミュニティを横断しながら巡り巡っているものですので、自分がいくら「初めて知った!」と思うようなものであっても、大抵誰かが先に観ていて誰かが先に語り始めています。間違っても自分や友だちの体験談などと偽ることはせずに、「仕入れた怪談を紹介する」ぐらいのテンションで臨むようにしてください。

こうやって説明すると「有名な怪談を人に語っても面白くない、効果がない」と思うかも知れませんが、実はそういう訳でもありません。怖い話というのは、話の要素や構成だけではなく、その話を誰が、どういう話し方で、どんな時に、どんなメンバーに対して語るかまでがセットでひとつのパッケージになる筆者は考えております。極端なことを言えば、語り手や聴き手が元ネタの時と異なるのであれば、それはもう別の怪談になると考えて構わないとすら思います。

現に前提・豆知識の項でご紹介した中西氏の動画ですが、同じ話(構成もほぼ同じ)でも「ゾッとする話版」の方が怖いと感じませんか?ふたつの映像を比べると以下の点に違いがあるように感じます。同じ怪談を話しても、周りのメンバーのリアクションや、場の雰囲気との相性、語り口やテンポが変わるだけで話の印象が大きく変わってくることがおわかりいただけるかと思います。

ゾッとする話版 vs 怖い話決定戦版

  • 聴者 :あり vs なし
  • 速さ :テンポよく vs じっくりと
  • 語り口:飄々と vs 怪談っぽく
  • 編集 :なし vs あり

実際に語り出してみて、その場の聴者全員が冒頭からオチまできっちり全てを覚えているというような場合は、流石に他のネタをセレクトしたほうが良さそうですが、大抵の場合そんな状況にはなりません。「それ知ってるかも」という方が混じっている程度であれば、「知っていたのに怖かった」と言わしめるよう、気持ちを込めて語りきってしまいましょう

怖い話というのは、想像以上に語り手(声、顔、表情、背丈、キャラクターetc)と話の内容の相性が重要になってきますので、もしかすると元ネタ以上に、話を借りた皆様の方がフィットするということも十分にあり得るのです。

 

話の構成、使い方

基本的には余分な描写がほぼ無い構成になっているので、上記のまま語っていけば問題ないかと思います。強いて注意点を挙げるとすれば、フリの段階で「駐車場での焼身自殺者」の性別を明らかにしないようにしましょう。(「女の焼身自殺があった」「女の霊が出る」などと言わない)勘の鋭い人ではなくとも、話の中盤に出くわす「道を聞いてきた女性」が恐怖のポイントを作ることは明白ですが、冒頭で「自殺者が女性である」という描写をしてしまうと話に女性が登場した時点で何となく展開が予想できてしまい、オチのキレが半減してしまいます

最後に1点、この怪談は本当に有名なお話となりますので、怪談中級者以上ならほぼ全員知っていると言っても過言ではありません。レパートリーに加える際には、語りの予習を入念に、また語る相手と状況をよく吟味してから始めるようにしましょう。

 

人に怪談を語ってみる - 怪談トーク(仮)のススメ -【後編】

こちらに手を伸ばす女

【目次】

 

前回までのお話

「人に怪談を語ってみる【前編】」では、怪談を語ることによって得られるメリットや目的のお話をいたしました。今回の記事【後編】では、実際にどう語っていけばよいか、どのようなネタを用意するかについて、ご紹介していきたいと思います。【前編】は以下よりご覧いただけます。 

人に怪談を語ってみる - 怪談トーク(仮)のススメ -【前編】 - 人に語りたくなる怖い話

 

はじめ方

切り出し方と予想される返答

「日常生活の中で、怖い話を語り始めるタイミングなんて無い」と思われる方も多いかもしれませんが、実は非常に簡単です。以下のように始めてみてください。

「最近怖い話にハマって集めてるんですけど、何か知らないですか?」

何も捻ることなく、直球で問題ありません。オススメの映画やドラマ、本などを人に問いかける時と同じようなイメージです。いきなりこちらから怪談を語り出すのは気味が悪いですが、相手から喋らせる分には意外と自然に切り出すことが出来ます。すると恐らく相手からは大きく以下4パターンのような答えが返ってくるでしょう。各返答については次の項目で解説します。

【怪談トーク(仮)の切り出しに対する返答 4パターン】

  1. 怪談を知ってる→話してくれる。
  2. 怪談を知ってる→正確には思い出せないor話すことはできない
  3. 怪談を知らない→けど聞くのは好き、怖いけどつい聞いちゃう等の賛同
  4. 怪談を知ってる知らない問わず、嫌いor苦手

返答別の流れ

まずは4番。この場合は怪談トーク(仮)終了です。嫌がる相手に無理強いをしてはいけません。ただ、他にも複数メンバーがいて怪談肯定派多数の場合、4番の方は3番の「怖いけどつい聞いちゃう」に転じる(あるいは転じざるを得ない状況になる)可能性がありますので、全体の空気を読みつつ一旦様子を見ましょう。

1番のようにすっと自ら話してもらえると助かるのですが、筆者の経験から申しますとそのようなケースは非常に稀です。大抵は「有名なものなら何となく知ってる」や「オチは覚えているけど流れはわからない」等の2番や、「テレビでやってると観ちゃうけど具体的に覚えているわけではない」3番がほとんどだと思います。

怪談の試運転・スキル向上を目的に据えている場合は3番タイプだとスムーズに進行できます。「それじゃあ、最近ひとつお気に入りの話を見つけたんですけど…」と語り出せば良いでしょう。2番タイプの進行としては、有名なものでもオチしかわからなくてもいいのでと、まずはひとつ話してもらうことをオススメします。人が覚えている流れやオチはそれだけ強烈なインパクトがあったということになりますので、今後の語りやセレクトの参考にすることできます。

また、ひとつ語ってもらったら必ず感想を述べるようにしましょう。その話は知ってたor知らなかった、こういうところが怖かったなど、何でも構いません。相手の行為に対してしっかりと反応を見せることで、「それじゃあ僕が最近聞いた話なんだけど…」とこちらから語り出す流れが作りやすくなります。もし今聞いた話に似たようなオチや流れ、設定の話が自分のレパートリーの中にあって、「それに似た話があって…」と話し出すことが出来ればよりスムーズですね。

 

用意するネタ

怪談を語るには当然ネタを用意しておかなくてはなりません。上記のルールには最低1話ずつと記載しておりますが、場が盛り上がった時のことも考えると5~6分程度の短編を3話程度語れるようにしておくと良いかもしれません。短編3話構成と考えた場合の筆者の理想的だと思うセットリストを以下にまとめました。こちらはあくまで筆者の独断と偏見になりますので、参考程度にご覧ください。「これ」という正解がある訳ではありませんので、その場に見合った話がセレクト出来るとベストです。

 

例①:事象の解説がメインの短編

最初の一話は「こういう○○は危ない」的な構成の豆知識・Tips系怪談がおすすめです。はじめのうちは情緒的な会話劇で展開していくような話ですと聴者のテンションが追いつきませんので、避けておいた方が無難でしょう。まだ聴者の趣向が見えていない状況ということもありますので、恐怖度よりは話の説得力・納得度に面白さを感じるような話が良いかと思います。「おぉ~…」や「なるほど…」というような、じわっとほんのり怖さを感じているような反応が見えればOKです。例えばこのブログで取り扱っているものだと以下のようなお話です。

【怖い話:001】風呂場で口にしてはいけない言葉 - 人に語りたくなる怖い話

 

例②:聴者の誰かが該当していそうな話

常に前もってメンバーを予測することは出来ませんので、一見難しいことのように思えますが、そんなことはありません。登場人物も設定も全てがぴったりな話をその都度ピックアップするとなると中々難しいのですが、「類似経験をしたことがある、具体的に想像が出来る」と言い換えるといかがでしょうか。怪談な中でも比較的多く見つけることができる設定で言うと、以下のようなパターンがあります。

  • 一人暮らしに纏わる話
  • エレベーターに纏わる話
  • 学校に纏わる話

話の背景が揃えられない場合でも、「30代の男性or女性が~」や「大学生or高校生のグループが」など登場人物の年齢・性別が聴者と近しいだけでも印象は大きく変ってきます。一人暮らし×大学生の話として、当ブログからは下記をオススメしておきます。

【怖い話:003】ワンルームの大女 - 人に語りたくなる怖い話

 

例③:最近仕入れたとっておきの話

3つ目は、自分が試したい新作や語りを磨きたいと思っている話です。または自分のレパートリーにある怪談とは趣向の違った、リアクションが読めない話でも良いでしょう。せっかく生の反応が窺える機会ですから、いつものスタメンに加えてチャレンジングなネタもラインナップに加えておきたいところです。セレクト①②で場の空気も温まっている(凍り付いている?) ころかと思いますので、積極的に新ネタを披露してきましょう。もし以前に怪談トーク(仮)を実践したメンバーがその場にいるのであれば、3話全てを総入れ替えする必要も出てくるかも知れませんので、アンテナを高くして新作の蒐集は欠かさず行うと良いでしょう。

 

語ったあとに

ひとつの怪談を語った後、話と話の間にも必ずやって欲しいのは、その話について聴者と共に反芻することです。聴者が怖いと感じた部分はどこか、どういった解釈をしたのかを話し合うことで、自分の語りの良かった部分や悪かった部分も分析することが出来ます。また、伏線の効いた話の場合は聴者の理解が揃っていない場合もありますので、後から内容の整理・補足を行っても良いでしょう。反芻すると言ってもこれも難しい話ではなく、「今の話の○○のとこがやばいと思っててさ、要するに…」と自分から話し出してしまえば良いのです。また、先に相手が話した際、聴いた側としての感想・解釈を述べてからこちらのターンになっているはずですから、自然と「話が終わったら振り返りをする」という空気も出来ているでしょう。ほとんどの場合は「今のやばいね…」と聴き手側から感想をいただけると思います。振り返りの時間では、聴者側から思いも寄らぬ解釈が述べられることもあり、「その解釈の方が怖い」となれば話がその場で修正・進化することも稀にあります。そういった部分も人に怪談を語っていく醍醐味だと筆者は感じています。

 

 おわりに

前・後編に渡った怪談トーク(仮)のススメ、いかがでしたでしょうか。怪談を語り始める手軽さや、聴き手を目の前して得られる発見や奥深さがお伝えできていれば何よりでございます。もしこの記事を見て実際に試してみた等の感想がございましたら教えていただけると嬉しいです。

以上、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

人に怪談を語ってみる - 怪談トーク(仮)のススメ -【前編】

こちらに手を伸ばす女性

【目次】

 

はじめに

今回の記事について

 今回の投稿は筆者のおすすめする怖い話の楽しみ方、「怪談トーク(仮)」の方法論について前・後編に分けてご紹介していく内容となっております。前編ではまず①怪談トーク(仮)とは②得られるメリット・デメリット、そして③実施する目的までをご説明いたします。

 

「怪談イベント」とは全くの別物

 まずはじめに、ここでお話する「怪談トーク(仮)」とは、前もってハコを押さえた上で人を集めて数名の話者が語りを披露する所謂「怪談イベント」への登壇を目指そうという趣旨ではありません。

さらに言うなら、予めスケジュールを段取って行うものですらありません。日常生活の隙間時間で、日々の雑談の中で、学校の同級生や会社の同僚に対して、しれっと怖い話を語り出す、トークテーマ”怖い話”」の時間を設けてみようというお話です。(自分で名付けておきながら“怪談トーク”があまりしっくりきていないので現状仮称です。。ネーミング募集中です。。)

 

怪談トーク(仮)の定義

定義という程仰々しい内容でもないのですが、今回話を進めていく上では以下のように定めておきたいと思います。

  • 参加者が自分を含めて2名以上である。(目の前に聴き手がいればOK)
  • 自分の語りに対して、参加者からのフィードバックをもらう。
  • 参加者にも自分と異なる怖い話を1つ以上語ってもらう。

要するに、人を目の前にして怪談を語り、語りに対しての感想も聞く、怖い話を知っていれば教えてもらうというただそれだけです。

 

メリット・デメリット

話の組み立てと語りの訓練

目の前の人に対して、怖い話を怖く伝えるにはコツがあります。それは自分の話を聴いてくれる方々が「語りへのリアクション」という形で教えてくれます。どの順番で話せば伝わるのか、声のボリュームやトーンはどの程度がいいのか、どこで息を吸ってどこまでを一息で話せばいいのか、食いついているか飽きているか、など語り手の一挙手一投足全てに対してタイムリーに跳ね返ってくるからです。様々な話を色々な人に語って聴者の反応を分析していくことで、次に語る時は話をもう少し膨らませてみる、あるいは余計な描写を外してみるなど創意工夫が生まれ、怖い話の構成と語りの精度は研ぎ澄まされていくのです。

 

「怖い」の傾向を知る

怪談蒐集の方針としては、大きく2つに分かれると思います。ひとつは自分の好きな話を集めていくこと、そしてもうひとつは人に語ることで怖いと思ってもらえる話を集めていくことです。「何に恐怖を感じるのか」は人によって大きく趣向が異なります。例えばざっくり思いついた系統を以下に7つ挙げてみました。

【怖い話のテーマ例 7パターン】

  1. 非常にリアルな実話心霊体験系
  2. 現実離れした描写の多いサイコパス人間系
  3. 実際にあった殺人事件・未解決事件系
  4. 「~をしてはいけない」呪い・祟り系
  5. 隠れた黒い歴史を紐解く戦争事実系
  6. 由来や体験を含んだ心霊スポット系
  7. 日本古来の言い伝え・習わし系

その現場が実際にあるorない、登場人物が現実にいるorいない、話の設定が現在or過去、恐怖の対象が霊or人、事実に基づいているorいないなどの組み合わせで分類してみたものですが、きっと人によって1~7番のどの話が聴きたいかは異なってきます。現場で直接話してみることで、自分以外の人達は何に恐怖を抱くのか、その傾向を探ることができます。怪談セレクトのセンス向上に役立つ、ミニマーケティングになるのです。

 

「生の話」と出会う

怪談好きの皆様なら「今まで聞いたことの無いような話に出会いたい」という根源的な欲求があるのではないでしょうか。その中で「まだ誰の色もついていない話」を探していくのであれば、これはやはりネットでも本でもなく、「人から直接話を聞く」のが最も手っ取り早い方法です。他にも心霊スポットに直接足を運ぶなどして取材を繰り返す、怪奇体験談を募集するなどの方法もありますが、「人に語ってもらう」ことが、やはり最も効率が良くてコストパフォーマンスの高い、新作の蒐集におすすめの手法となります。

 

強いて挙げるデメリット

強いてデメリットを挙げるなら、この怪談トーク(仮)が上手くいって2時間を越えるような長丁場となった場合は、おそらくその場のメンバーが全員「何を聞いても怖いモード」に陥るという点です。どんな些細な音でも物でも全て怖く感じて、トイレに行くにも勇気が必要な状態です。「全員をしっかり怖がらせることが目的」の会であれば万々歳なのですが、例えば合コンなど他の目的が主眼の場合は話をする前の浮かれた楽しい空気に戻すことが困難になりますので、その点にご留意いただけますと幸いです。また、そもそも「怖い話が嫌い」という方々も勿論一定数いらっしゃいますので、お気をつけください。

 

実施する目的

怪談トーク(仮)を行う主な目的は、上記で挙げたメリットのうちのどれかになると思います。一度実施すればもれなく3つのメリットが同時に獲得できますが、慣れないうちは以下3つのうち、どれかを意識して実施すると気づきが得られやすいでしょう。

【怪談トーク(仮)の目的 3つ】

  1. 怪談の試運転、スキルの向上
  2. ミニマーケティング
  3. 新ネタの蒐集

 

 次回

今回の内容はここまでとなります。次回、「人に怪談を語ってみる - 怪談トーク(仮)のススメ -【後編】」では、日常でトークを実践する際の切り出し方や事前に用意しておくネタの選定基準などをご紹介したいと思います。もし興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、またご覧いただけますと幸いです。

以上、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

【後編】はこちらから↓

人に怪談を語ってみる - 怪談トーク(仮)のススメ -【後編】 - 人に語りたくなる怖い話

 

第3話『ワンルームの大女』- 考察と語り方

怖いワンルーム

【目次】

  • 概要
  • 本文
  • 前提・豆知識
    • 髪の長い女の霊
  • 分析・考察
    • A君のその後
    • B君のその後
    • C君のその後
    • Dさんのその後
    • Eさんのその後
  • 語る際のポイント
    • 6人の登場人物
    • 難易度のコントロール

 

概要

語り尺  :平均的(6~7分)

知名度  :筆者の知人が体験したお話

難易度  :初級~中級

主な話者 :六穴

 

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第2話『某スパリゾートの奇談』- 考察と語り方

怖い寝室

【目次】

  • 概要
  • 本文
  • 前提・豆知識
    • 某スパリゾート
    • 古くて安い値段の割に豪華なホテル
    • テレビの「砂嵐」
  •  分析・考察
  • 語る際のポイント
    • 「物語ベース」な進行
    • 聴者に自分事化させる「効果音」
    •  期待したい流れ

 

概要

語り尺  :やや短い(5~6分)

知名度  :筆者の友人が体験したお話

難易度  :中級

主な話者 :六穴

 

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第1話『風呂場で口にしてはいけない言葉』- 考察と語り方

怖い風呂場

【目次】

  • 概要
  • 本文
  • 前提・豆知識
    • 水場には霊が出る
    • かごめかごめ
    • 「順番待ちをするリンスの視線」
  •  分析・考察
  • 語る際のポイント
    • 題目
    • 導入
    • 裏付け
    • 本題
    • 詳細
    • オチ

 

概要

語り尺  :やや短い(4~5分程度)

知名度  :有名

難易度  :初級

主な話者 :特になし

 

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