人に語りたくなる怖い話

趣味で集めた怖い話・怪談のご紹介と、話の理解や語り方について深めていくための分析録を記しております。

人に怪談を語ってみる - 怪談トーク(仮)のススメ -【後編】

こちらに手を伸ばす女

【目次】

 

前回までのお話

「人に怪談を語ってみる【前編】」では、怪談を語ることによって得られるメリットや目的のお話をいたしました。今回の記事【後編】では、実際にどう語っていけばよいか、どのようなネタを用意するかについて、ご紹介していきたいと思います。【前編】は以下よりご覧いただけます。 

人に怪談を語ってみる - 怪談トーク(仮)のススメ -【前編】 - 人に語りたくなる怖い話

 

はじめ方

切り出し方と予想される返答

「日常生活の中で、怖い話を語り始めるタイミングなんて無い」と思われる方も多いかもしれませんが、実は非常に簡単です。以下のように始めてみてください。

「最近怖い話にハマって集めてるんですけど、何か知らないですか?」

何も捻ることなく、直球で問題ありません。オススメの映画やドラマ、本などを人に問いかける時と同じようなイメージです。いきなりこちらから怪談を語り出すのは気味が悪いですが、相手から喋らせる分には意外と自然に切り出すことが出来ます。すると恐らく相手からは大きく以下4パターンのような答えが返ってくるでしょう。各返答については次の項目で解説します。

【怪談トーク(仮)の切り出しに対する返答 4パターン】

  1. 怪談を知ってる→話してくれる。
  2. 怪談を知ってる→正確には思い出せないor話すことはできない
  3. 怪談を知らない→けど聞くのは好き、怖いけどつい聞いちゃう等の賛同
  4. 怪談を知ってる知らない問わず、嫌いor苦手

返答別の流れ

まずは4番。この場合は怪談トーク(仮)終了です。嫌がる相手に無理強いをしてはいけません。ただ、他にも複数メンバーがいて怪談肯定派多数の場合、4番の方は3番の「怖いけどつい聞いちゃう」に転じる(あるいは転じざるを得ない状況になる)可能性がありますので、全体の空気を読みつつ一旦様子を見ましょう。

1番のようにすっと自ら話してもらえると助かるのですが、筆者の経験から申しますとそのようなケースは非常に稀です。大抵は「有名なものなら何となく知ってる」や「オチは覚えているけど流れはわからない」等の2番や、「テレビでやってると観ちゃうけど具体的に覚えているわけではない」3番がほとんどだと思います。

怪談の試運転・スキル向上を目的に据えている場合は3番タイプだとスムーズに進行できます。「それじゃあ、最近ひとつお気に入りの話を見つけたんですけど…」と語り出せば良いでしょう。2番タイプの進行としては、有名なものでもオチしかわからなくてもいいのでと、まずはひとつ話してもらうことをオススメします。人が覚えている流れやオチはそれだけ強烈なインパクトがあったということになりますので、今後の語りやセレクトの参考にすることできます。

また、ひとつ語ってもらったら必ず感想を述べるようにしましょう。その話は知ってたor知らなかった、こういうところが怖かったなど、何でも構いません。相手の行為に対してしっかりと反応を見せることで、「それじゃあ僕が最近聞いた話なんだけど…」とこちらから語り出す流れが作りやすくなります。もし今聞いた話に似たようなオチや流れ、設定の話が自分のレパートリーの中にあって、「それに似た話があって…」と話し出すことが出来ればよりスムーズですね。

 

用意するネタ

怪談を語るには当然ネタを用意しておかなくてはなりません。上記のルールには最低1話ずつと記載しておりますが、場が盛り上がった時のことも考えると5~6分程度の短編を3話程度語れるようにしておくと良いかもしれません。短編3話構成と考えた場合の筆者の理想的だと思うセットリストを以下にまとめました。こちらはあくまで筆者の独断と偏見になりますので、参考程度にご覧ください。「これ」という正解がある訳ではありませんので、その場に見合った話がセレクト出来るとベストです。

 

例①:事象の解説がメインの短編

最初の一話は「こういう○○は危ない」的な構成の豆知識・Tips系怪談がおすすめです。はじめのうちは情緒的な会話劇で展開していくような話ですと聴者のテンションが追いつきませんので、避けておいた方が無難でしょう。まだ聴者の趣向が見えていない状況ということもありますので、恐怖度よりは話の説得力・納得度に面白さを感じるような話が良いかと思います。「おぉ~…」や「なるほど…」というような、じわっとほんのり怖さを感じているような反応が見えればOKです。例えばこのブログで取り扱っているものだと以下のようなお話です。

【怖い話:001】風呂場で口にしてはいけない言葉 - 人に語りたくなる怖い話

 

例②:聴者の誰かが該当していそうな話

常に前もってメンバーを予測することは出来ませんので、一見難しいことのように思えますが、そんなことはありません。登場人物も設定も全てがぴったりな話をその都度ピックアップするとなると中々難しいのですが、「類似経験をしたことがある、具体的に想像が出来る」と言い換えるといかがでしょうか。怪談な中でも比較的多く見つけることができる設定で言うと、以下のようなパターンがあります。

  • 一人暮らしに纏わる話
  • エレベーターに纏わる話
  • 学校に纏わる話

話の背景が揃えられない場合でも、「30代の男性or女性が~」や「大学生or高校生のグループが」など登場人物の年齢・性別が聴者と近しいだけでも印象は大きく変ってきます。一人暮らし×大学生の話として、当ブログからは下記をオススメしておきます。

【怖い話:003】ワンルームの大女 - 人に語りたくなる怖い話

 

例③:最近仕入れたとっておきの話

3つ目は、自分が試したい新作や語りを磨きたいと思っている話です。または自分のレパートリーにある怪談とは趣向の違った、リアクションが読めない話でも良いでしょう。せっかく生の反応が窺える機会ですから、いつものスタメンに加えてチャレンジングなネタもラインナップに加えておきたいところです。セレクト①②で場の空気も温まっている(凍り付いている?) ころかと思いますので、積極的に新ネタを披露してきましょう。もし以前に怪談トーク(仮)を実践したメンバーがその場にいるのであれば、3話全てを総入れ替えする必要も出てくるかも知れませんので、アンテナを高くして新作の蒐集は欠かさず行うと良いでしょう。

 

語ったあとに

ひとつの怪談を語った後、話と話の間にも必ずやって欲しいのは、その話について聴者と共に反芻することです。聴者が怖いと感じた部分はどこか、どういった解釈をしたのかを話し合うことで、自分の語りの良かった部分や悪かった部分も分析することが出来ます。また、伏線の効いた話の場合は聴者の理解が揃っていない場合もありますので、後から内容の整理・補足を行っても良いでしょう。反芻すると言ってもこれも難しい話ではなく、「今の話の○○のとこがやばいと思っててさ、要するに…」と自分から話し出してしまえば良いのです。また、先に相手が話した際、聴いた側としての感想・解釈を述べてからこちらのターンになっているはずですから、自然と「話が終わったら振り返りをする」という空気も出来ているでしょう。ほとんどの場合は「今のやばいね…」と聴き手側から感想をいただけると思います。振り返りの時間では、聴者側から思いも寄らぬ解釈が述べられることもあり、「その解釈の方が怖い」となれば話がその場で修正・進化することも稀にあります。そういった部分も人に怪談を語っていく醍醐味だと筆者は感じています。

 

 おわりに

前・後編に渡った怪談トーク(仮)のススメ、いかがでしたでしょうか。怪談を語り始める手軽さや、聴き手を目の前して得られる発見や奥深さがお伝えできていれば何よりでございます。もしこの記事を見て実際に試してみた等の感想がございましたら教えていただけると嬉しいです。

以上、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。